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ゴマメの歯ぎしり その3

「損耗の補充をどうするのか?」

 防衛法制についての議論が喧しいこのごろである。元自衛官として自衛隊の行動の根拠となる法制を整備していただけるのはありがたいことではあり歓迎したい。
 しかし、管理者は少し心配なことがある。今回議論されている法制そのものより、有事の際生じる損耗の補充は大丈夫なのだろうか?と。管理者が中隊長のときの訓練では、当然損耗が生じるため、統裁部から人員装具の損耗を示され連隊に補充請求をしたことを思い出す。長くてせいぜい1週間程度の訓練では、実際に補充が来る前に「状況終わり」となり、現実に損耗が部隊行動に支障をきたすことに思いが至らなかった。

 管理者は、現在予備自衛官でもあるが、自衛隊の予備の実態を知り、色々考えることがある。
 読者諸氏はご承知のように陸上自衛隊の予備には、「予備自衛官」「即応予備自衛官」及び「予備自衛官補」がある。また、「予備自衛官」には元自衛官の応募と公募による2種類がある。
 「即応予備自衛官」は、通常コア部隊に所属しており有事の際は招集を受けて実動部隊として行動する。したがって、損耗補充のための予備ではない。
 「予備自衛官補」は自衛官未経験者のなかから採用し一般公募予備自衛官補と、特技を持った技能公募予備自衛官補からなる。一般公募予備自衛官補は3年間で50日(新入隊員の前期教育レベル)の訓練を受けた後、「予備自衛官」として採用されるが、直ちに予備としての運用はできない。
 「予備自衛官」は後方支援として、主力が出動した後の駐屯地警備や災害派遣等も担任することとなっている。しかし年間5日間の訓練しか受けていないし、半数以上が50歳以上と言う年寄り集団のため第一線の損耗補充には使えない。また、予備自衛官補あがりの一般公募予備自衛官は若い世代が多いものの各個訓練のみで部隊訓練は受けていないため直ちに現場には出せない。技能公募予備自衛官は専門職として採用されているので、医官等に限れば補充に使えるかもしれない。つまり、現状の「予備自衛官」及び「即応予備自衛官」は損耗の補充に対応したものではないということだ。それでは、発生した部隊の損耗にどのように対処するのだろうか。

 平時から傷病及び職務離脱等により損耗が発生する。戦闘が始まれば、それに加え戦死・戦傷等の損耗が発生する。戦闘部隊は行動にあたっては予備を保有することとなっているが、これは戦闘の推移により運用するものであり、第一線の損耗に対し予備部隊からの補充はできない。どこから補充するのだろうか。

 防衛白書等を見る限り、明確には示されていないようだ。防衛省(陸幕)は何らかの計画で対応するようにしているのだろう。おそらくは当初行動していない部隊から要員を引き抜いてこれを補充にあてて時間を稼ぎ、同時に緊急募集により当初は元自衛官(任期制隊員)等の人を集め訓練して補充するのではないか。また、一般公募予備自衛官に対し短期教育訓練を行うことも検討されているだろう。(これはあくまで管理者の想像で、実際にはもう少し具体的な計画が存在するのかもしれないが…)緊急募集をするにしても大幅に教育隊等を削減した陸上自衛隊に訓練を担当する機関はあるのか?訓練計画・実施場所はあるのか?そして、近代戦を遂行するのに必要な隊員を素人相手に短期間で促成することはできるのか?等々考えると損耗の補充はかなり難しいのではないかと思う。

 今後、色々な形で自衛隊は実戦を経験することになる。任務継続のためには人的資源を確保することは喫緊の事柄であろう。真に役立つ自衛隊を育成するため「予備の充実(損耗の補充)」を切に望む所以である。